「開発のことはよくわからないから、すべてお任せで」

多くの経営者がこの言葉とともに、新規事業の生命線を開発会社に預けてしまいます。しかし、この「丸投げ」が後に取り返しのつかない事態を招くケースが後を絶ちません。

最も深刻なトラブル:ソースコード管理権限の喪失

実際に起きている問題

開発会社との契約終了後、こんな状況に陥る企業が少なくありません:

  • ソースコードにアクセスできない - GitHubやGitLabのアカウントが開発会社名義で、引き継ぎを拒否される
  • 修正や機能追加ができない - 他の開発会社に依頼しようにも、ソースコードがないため一から作り直し
  • 事業売却や資金調達で困る - デューデリジェンスでソースコードの提出を求められても対応できない

なぜこうなってしまうのか

問題の根本原因は、ソースコード管理の仕組みを理解せずに契約してしまうことにあります。

多くの開発会社は「効率的に開発を進めるため」という理由で、自社のGitHubアカウントでリポジトリを作成します。そして、納品時には「完成したシステム」だけを渡し、ソースコードの管理権限は移譲しません。

クラウドサービスの管理も同じ問題を抱えている

ソースコードだけでなく、以下のサービスアカウントも開発会社に管理されがちです:

よくある「開発会社任せ」のサービス

  • AWS / Google Cloud / Azure - サーバーやデータベースなどのインフラ
  • ドメイン管理 - お名前.com、ムームードメインなど
  • 外部API - 決済システム(Stripe、PayPay)、メール配信(SendGrid)、SMS送信など
  • 監視・分析ツール - Google Analytics、Sentry、Datadogなど

これらすべてを開発会社のアカウントで管理されると、契約終了時に以下の問題が発生します:

  1. サービスが突然停止 - アカウントの引き継ぎができず、サービスが使えなくなる
  2. データの消失 - バックアップデータやユーザーデータにアクセスできない
  3. 月額費用の不透明化 - 実際の利用料がわからず、高額な管理費を請求される

正しい管理体制の構築方法

1. 基本原則:自社アカウントで契約する

すべてのサービスは自社名義のアカウントで契約し、開発会社には必要な権限だけを付与する形にします。

【推奨される体制】
自社(オーナー権限)
  └─ 開発会社A(開発者権限)
  └─ 開発会社B(開発者権限)※必要に応じて追加
  └─ 社内IT担当者(管理者権限)

2. 契約前のチェックリスト

開発会社と契約する前に、必ず以下を確認してください:

  • ソースコードの管理は自社のGitHubアカウントで行えるか
  • すべてのクラウドサービスは自社アカウントで契約できるか
  • 開発終了後もソースコードとドキュメントにアクセスできるか
  • 他の開発会社への引き継ぎは可能か
  • 各サービスのアカウント情報と管理方法のドキュメントは提供されるか

3. IT専任者の必要性

「でも、ITのことはよくわからないし…」と思われるかもしれません。

しかし、最低でも1名のIT専任者は必須です。この担当者は高度な技術力は必要ありません。以下ができれば十分です:

  • 各種サービスのアカウント管理
  • 開発会社との基本的なコミュニケーション
  • ドキュメントの管理と整理
  • 定期的なバックアップの確認

社内にいない場合は、技術顧問ITコンサルタントを活用することも検討してください。月数十万円の顧問料で、数千万円の損失を防げるなら、十分な投資対効果があります。

開発会社との正しい付き合い方

「丸投げ」ではなく「協業」の姿勢で

開発会社は技術的な実装のプロフェッショナルです。しかし、あなたの事業の将来まで預けるべき相手ではありません。

正しい関係性は:

  • 開発会社:技術的な実装と提案
  • 自社:事業の方向性決定と管理権限の保持

良い開発会社の見分け方

以下のような対応をする開発会社は信頼できます:

  1. 管理権限について最初に説明してくれる
  2. 自社アカウントでの管理を推奨してくれる
  3. 引き継ぎドキュメントの作成を約束してくれる
  4. 他社への移管も前提とした開発を行う

逆に、「すべて弊社で管理した方が効率的です」「技術的なことは難しいので、お任せください」という開発会社は要注意です。

まとめ:事業の生命線は自社で握る

新規事業において、ソースコードとクラウドサービスは事業の生命線です。これらの管理権限を失うことは、事業そのものを失うことに等しいのです。

NaviPartnerでは、このような管理体制の構築から、開発会社との適切な関係構築まで、包括的にサポートしています。

「開発会社に依頼する前に、まず相談したい」 「現在の管理体制に不安がある」 「IT専任者がいないが、どうすればいいか」

このようなお悩みをお持ちの経営者様は、ぜひ一度ご相談ください。

今すぐできる第一歩

  1. 現状の棚卸し - 今使っているサービスの管理者は誰か確認する
  2. パスワード管理 - 各サービスのログイン情報を安全に管理する
  3. 契約書の確認 - ソースコードの著作権や管理権限について確認する

小さな一歩から始めることで、将来の大きなリスクを回避できます。


NaviPartner(ナビパートナー)は、非IT企業の新規事業立ち上げを支援する顧問サービスです。技術と経営の両面から、あなたの事業を成功に導きます。

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